【はじめに】
子どもたちは地域の宝です。そして将来、この地域を引き継ぎ形づくる主役となります。私たち青年会議所は社会が自分に何をしてくれるかではなく、自分が社会に何ができるかを考えながら活動すべき団体です。この姿勢と取り組みは次世代の子どもたちに伝えるべき重要なことです。
次世代に引き継ぐべき真に豊かな社会とはどんな社会でしょうか。子どもたちが社会人となった時、生き生きと活躍できる社会を目指すべきと考えます。
超高齢化社会である球磨人吉地域は、これから家庭を持ち、この地域で生きていくであろう次世代の人々にとっても魅力があり、住みたくなる地域でなければなりません。
豊かな自然と文化、深い人と人とのつながりはとても大きな財産です。しかし、その財産の魅力が伝わなければ意味がありません。
また、次世代の人々が子どもの頃から自らが住む地域に真剣に向き合う機会を作ることも必要だと考えます。自ら考えることで、この地域に生活することの動機付けとなるからです。
この20年余り、子どもたちを取り巻く状況も大きく変わってきています。不登校、摂食障害等の子どもたちの心の病や、学級崩壊、家庭の教育力の低下、ニートの増加等見過ごせない問題が目立ってきています。家庭、隣近所、職場など人と人との関係が希薄になった結果、人間関係を上手く作れなくなり、コミュニケーションが苦手になっている人が増えてきています。自らを大事にするだけでなく相手を思いやる心をより伸ばしていくことが大事でしょう。
現状、生産年齢人口の割合は減っていく一方であり、自治体の予算だけ見てもまちづくりの自由度が低くなっていることから分かるように、地域社会が硬直化している様に感じられます。生産年齢人口の核となる次世代の人々が住みたいと思う地域を描いていくことが今必要です。
【積極的な広報を行おう】
JCは広域の活動エリアと視野を持ち公益性を旨とする団体です。公益法人制度改革での選択期限が迫る中、人吉JCは公益社団法人格取得に向けた取り組みを行います。53年の歴史の中で実践されてきた事業は、会員のためだけでなく地域住民を対象としていました。それに加えここ数年来、人吉JCの活動は地域社会をより意識しています。
私たちが行う事業は不特定多数の地域住民のためでなければなりません。そしてどれだけ多くの人に益を与えられたかが重要であり、人吉JCは住民に大きな益をもたらすことを目指していかなければなりません。
そのために、広報の充実を行います。数々の事業は多くの人に理解され参加していただき、伝えたい体験やメッセージを広く浸透させることで初めて意味を成します。
ビジョンや使命、メンバーの共有する価値観、その現われとしての事業の意義、目的を広く浸透させるためには魅力ある活動が前提ですが、人吉JCとはどんな団体であるのかそのメッセージをどれだけ深く、広く伝えるかが最大の課題となります。そのためにまず地域における各種団体をターゲットとします。これからはJC単体の事業であっても今まで以上の各種団体に理解していただき、協力いただける環境が必要になってきます。そのためには、普段から定期的にメッセージを送り続ける必要があります。どの団体にどのようなメッセージを送るべきかを整理し、その関係が1年限りのものとならないよう継続できる形づくりを行っていきます。
【人吉JCの魅力を伝え仲間を募ろう】
球磨人吉地域には明確な使命をもった様々な団体や個人が存在し、それぞれの分野でリーダーシップを発揮しています。人吉JCの会員でそれらの様々な分野に関わっている会員が多数います。
人吉JCが先駆的な取り組みを率先して行う団体であるためには、会員がもつ広範囲に渡る経験と人脈を活かしていかなければなりません。それだけでなく、様々な経験や人脈を持つ人々を受け入れる器でなければなりません。
明るい豊かな社会を創造する人吉JCには、大きな器があります。だからこそ、まちづくりやひとづくりといった様々な活動をより実のあるものとすることができます。私たちにとって欠くべかざる重要な課題である会員拡大を行う上で、この器を強みとして十分に活かしていきます。
また、私たちは本年、活動エリアを明確に示すため名称変更を行います。未だ各市町村の人口比に対し、メンバーの所在地に大きな偏りがあることも事実です。真にエリア全体の視点からの活動を展開するためにも、名称変更を機に将来的により適切なバランスをとることができると確信しています。
JCは40歳で卒業と決まっているために、減少数以上の会員拡大を行えなければ会員数は減る一方です。一度減ってしまった会員数を増やすのは、それまで以上に大変です。ここ数年、卒業生が多数いたにも関わらずその数を上回る会員拡大を行えました。それは強い決意と努力の成果であり、その成果を無駄にすることの無いよう、本年度もより一層の会員拡大を果たします。
また、限られた時間の中で会員や地域住民とともにまちづくりやひとづくりに取り組んでいくとき、地域社会の問題点や課題のポイントを絞り、課題解決に向けた的確な手法を考えだすことが重要です。そのために会員一人一人にとって必要なスキルを伸ばしていくだけでなく、住民とともにそのスキルを共有していくことで相乗効果を図ります。
【住民が主体的に行うまちづくり】
各市町村で求められている住民自治の確立は、自治体における大きな課題であるとともに、住民にとっても同じように大きな課題です。
私たちがどんな生活を送りたいか、どのような地域で生活したいかをより深く考えるときが来ています。無関心という言葉で片付けるのではなく、主権者として、自ら地域をデザインする視点を持つべきです。
住民一人一人が球磨人吉地域に何が必要であるか意見を交換し合い、共通のビジョンをつくることが求められています。この課題に住民である私たち人吉JCメンバーが率先して取り組みます。その手段としてマニフェスト・サイクルを循環させる取り組みとその取り組みの基礎となる地域に対する理解を深めることが重要です。
なぜなら、マニフェスト・サイクルは、住民の意思を自治体に反映させる手段の一つであるだけでなく、地域を自らデザインするきっかけを与えるものであるからです。球磨人吉地域をどのような社会として形づくりたいのか、形づくるために私たちは何を目指していくべきかをひとつの提案としてまとめます。またその取り組みを通して、地域の理解を深めていきます。マニフェストサイクルの確立をより一歩前に進めるきっかけとなると考えるからです。
住民の命と財産を守る防災対策、心安らかに過ごせる福祉の充実、そして、地域の財産を生かした経済活動の拡大、生き生きとした子どもたちを育む教育等、取り組むべき課題は山積しています。
その中でこれらの取り組みを学生に紹介し、参加できる機会を作ります。自らが社会のために何が出来るかを考え、経験する貴重な機会となるからです。未来の球磨人吉地域を作るのは彼らです。これらの過程を見聞し経験するのに早すぎるということはないはずです。
ふたつめに、まちづくりの具体的な取り組みとして、「地域のたからづくり」を推進していきます。球磨人吉地域には豊かな食資源が眠っています。その資源を活かしきるには計画的な取り組みが必要となります。人吉JCが食の分野で成しえることは、その食資源を起爆剤として、よりプラスとなる球磨人吉地域のイメージ作りを行うことです。地域の食資源を地域活性化の一助とすべく昨年に引き続き取り組んでいきます。
【自らに誇りを持つ次世代を育むために】
世界中のどの国の人々も、自らの文化を背景にアイデンティティーを確立します。その結果、自らの家族、地域、国の文化に誇りを持つことができます。しかし、日本人、特に子どもたちはどうでしょうか。
世界各国で「自分は価値のある人間だ」いう質問に対し、多くの子どもたちがそう思うと答えています。しかし、日本においてはその割合が異常なほど低く、多くの子どもたちがそう思わないと答えています。(出展:(財)日本青少年研究所「中学生の生活意識に関する調査」2002年11月実施 例:アメリカ80%、中国90%、日本30%)つまり、子どもたちは自分が社会に必要とされていないと感じているのです。このことはとても大きな問題です。
まず、子どもたちが、日本の文化、地域の文化を知る機会を作ります。この取り組みを将来にわたり心に残る機会とするためには、知識だけでなく子どもたちが実感できる体験の場でなければなりません。この取り組みが継続した体験の場となることを目指します。
自らの立つ文化を知らずして、自分自身を知ることはできません。
球磨人吉地域には多くの文化財や伝統文化が現存しています。それらを知るだけでなく、その文化を育んだ球磨人吉の歴史や自然を学ぶ機会を作っていきます。
次に、他の国の文化を知る機会を作ります。
他者とのせめぎ合いや折り合いの中で初めて気づくこともあります。そのような葛藤の中で、自らが日本人であり、日本の文化や社会が自分の立つべきフィールドであると強烈に意識でき、その経験が、日本の文化に誇りを持つ大きなきっかけとなります。
他者を知ることが出来なければ、自らを深く知ることはできません。他者を知るためには人間関係をつくる他ありません。本年は、人間関係を育む中で、他の国の文化を肌で感じ、子どもたちに自らの文化を見つめ直す機会を提供します。子どもたちにとっての国際交流の真の意義はそこにあるのではないでしょうか。子どもたちが自らの文化を強烈に意識できる場を作っていきます。
また、地域の人々の経験の場として、世界に誇れる日本文化のひとつ、茶道の世界を紹介します。人吉JCは、裏千家千玄室大宗匠と深い縁があります。国宝青井阿蘇神社において大宗匠をお招きして献茶式を開催します。このまたとない機会を通じ、茶道をきっかけとして日本の文化を学ぶ機会を作っていきます。
【おわりに】
本年度は、人吉JC創立54年目にあたります。53年の歴史の中で様々な職種の仕事を持つ理事長がいらっしゃいましたが、その中で私は教育分野という珍しい分野からの理事長となります。
教育分野は他の分野と違い、期限毎に結果が出る世界ではありません。子どもたちが今経験したことがいつ芽吹きどのように花を咲かせるか全く分かりません。しかしだからこそ多くのそして子どもたちにとって素晴らしいと信じる種を植え、ふさわしい環境を与え続ける努力を惜しみません。
この成果の見えない努力を支えるのが真摯な姿勢です。水遊びやお絵かき、絵本の読み聞かせが子どもたちの将来にどんな花を咲かせるかは分かりませんが、毎日丁寧に一生懸命、愛情を注ぎ続ける取り組みが、大きな花を育てる苗床となると信じています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は未曾有の地震や津波によって多くの命、そして人々の生きるすべを奪いました。しかし、今その悲しみや失望感を乗り越え、日本国の一人一人が支えあい幸せな生活を取り戻すべく日々努力しています。いつの日か必ず復興を成しえると信じて取り組むその姿は、真摯と表現できると思います。
私たちは、この震災をきっかけとして地域の一員として何ができるのか、何を成すべきか、今、出来ることは何なのかを自ら問い直しました。今、あたりまえとしてあるものがどれだけ有り難いことであるのか、地域の先輩方が地道に積み上げてきた歴史がいかにすばらしく、有り難いものであるのかをこれほど意識し、考える機会を与えられた時期はここ近年無かったのではないでしょうか。
その中で私たち人吉JCは明るい豊かな球磨人吉地域をつくり上げようとしています。目に見える何かではなく、日々続けていく真摯な努力こそが地域の種となり、花を咲かせると考えます。私たち青年会議所は、明るい豊かな社会をつくり上げるため、地域の一員として何ができるのか、何を成すべきかを真剣に考え、地域の誇るべき歴史、財産を知り、その歴史を尊重しつつ、今現在、私たちが生きている社会をどのように構成するか、変革すべきかを真剣に議論し、時に行動に移してきました。その行動は決して派手なものではなく、あたりまえのことをきちんと捉え、あたりまえに取り組むべきことに取り組んでいく地道な作業です。
その地道な作業を飽きることなく継続し、日々私たちの地域をどうつくりあげるかを自ら考え抜く気概と情熱を持ち続け、その実現のためにいかに地道に活動に取り組み続けるかが、私たち人吉JCの活動の根底に不可欠なことです。
1年が終わったときに、会員一人一人が自信を持って自らの活動を誇ることができるよう最後の一日まで真摯に取り組んでまいります。